第9章

夢の中の世界は、いつだって曖昧で、どこか歪んでいる。

気がつけば私は、見知らぬようでいて、どこか見覚えのある場所にいた。薔薇城の、私の寝室だ。

窓の外にはローゼンタール王国の王都、銀月市が広がっている。だが、その遠景には不吉な火の手と黒煙がぼんやりと見えた。親王の反乱、西部の水害、そして父王が病に倒れられたという報せ。母上がつきっきりで看病し、叔父であるクレモント公爵が反乱の鎮圧に向かったという断片的な情報が、脳裏を駆け巡っては消えていく。

そして何より最悪なことに、私は自身の寝室に軟禁されていた。罪状は、ルル・サンダースに対する殺害未遂。刑期は半年。

「最後には手を引いたの...

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